2019年12月、29歳の私は、当時勤めていた会社を退職することを真剣に考えていました。
会社の待遇や仕事内容に不満があったわけではありません。
私は単純に中国への語学留学に強い願望を持っており、そのために退職を検討していました。
このブログでは、私の経験をもとに、社会人が会社を退職し、語学留学することについて記してみました。
私の結論は、社会人の語学留学に賛成です。
この記事が現在社会人で語学留学を検討している方々にとって、何らかの参考や助言になれば幸いです。
自身の体験談
中国への留学に至るまで
私は大学時代に中国へ興味を持つようになり、在学中に留学を望んでいました。
中国語の習得だけでなく、歴史や文化に直接触れてみたいという気持ちがありました。
しかし当時、尖閣諸島付近で中国漁船が海上保安庁の巡視船へ衝突する事件が発生。
中国での反日デモやストライキの映像を見て、身の危険を感じ留学を断念することに。
結局、大学在学中に中国へ行くことはありませんでした。
卒業後、私は地元のメーカーに就職。
中国語は、仕事をしながらでも学べるという人もいましたが、私には難しかったです。
業界知識、製品知識、貿易に関する勉強、業務フローの把握、英語力の維持など、日々多くのことを学ばなければなりませんでした。
そうこうしていると今度はインドネシアへの赴任が急遽決まり、インドネシア語を急いで勉強する必要があり、中国語の学習どころではありませんでした。
東南アジアへ赴くと、中国への憧れは更に強まりました。
東南アジアでビジネスをしていると、中国語の重要性を感じると同時に、東南アジアに住む華人と中国本土の人々の違いが気になったり、華人の文化の源流である中国の歴史や文化に、やはり触れたいという気持ちが増々強まっていきました。
結局、会社で働き続けるよりも「中国に行きたい」という気持ちが勝り、退職を決意しました。その会社には6年半勤めました。
退職交渉の際に、中国行きを宣言しました。
その際、担当者より中国に子会社があるので、そちらへの出向も提案されました。
しかし私は、仕事のことは考えずに、自由に動き回り、四六時中中国の人たちに交わっていたいという気持ちがあったので、その提案を断りました。
また会社によっては、若手に投資して海外の提携スクールに派遣し語学留学をさせるケースもありますが、それはお金が豊富にある一部の大手企業ができること。
私が勤務していた会社は中堅企業だったので、そのような福利厚生はありませんでした。
もちろん「中国語を習得すると、これだけ会社にとってメリットがある」ことを示した資料を作り、上層部に提案して会社の資金で留学する手もないわけではなかったのですが、会社との貸し借りを作りたくなかったので、この考えも却下しました。
また「1年間の休職」という形も考慮しましたが、こちらは「前例がない」とのことで、会社側が乗り気ではありませんでした。
退職交渉は退職する半年前に実施。
辞めるまでの半年間は、引継ぎ作業に集中しました。
そんなこんなで、会社とは特にトラブルもなく、淡々と退職することができました。
その後、貯金を使って中国へ渡り、とある大学の語学学校に入学しました。
その時、私は30歳でした。
念願の中国へ
中国には1年間滞在する予定でした。
留学前には周囲から「留学後の計画は?」と問われましたが、私は「そんなの知らんがな」と答え、留学に踏み切りました。
多くの人が「留学後のビジョンや綿密な計画が必要」と言いますが、私はそういったことを一切考えずに留学しました。
明日や明後日のことさえ予測できないのですから、来年のことを考えるのは無意味だと思いました。
計画通りに物事が進むとは限らないため、細かな計画は立てず、単に「中国語を話せている自分」という将来像だけを妄想して中国へ向かいました。
中国に到着して最初の1週間は、大学の入学登録や銀行口座の開設に苦労しました。
しかし、その後は毎日楽しく過ごせました。
平日は朝から晩まで中国語の勉強に没頭し、食事の時間は外食で美味しい中華料理を頬張りました。
暇な時間は中国人の友人たちと近くの観光地を訪れたり、映画を観たりして過ごしました。
非常に充実した日々を送っていたので、仕事を辞めたことに後悔した日は一日もありませんでした。
むしろ、もっと早く来るべきだったと思いましたね。
将来のことは考えず、ただその時を楽しむことに集中しました。
朝目覚めてから就寝まで、中国での生活を堪能し、毎日疲れ切るまで過ごしました。
アクシデント発生
充実した日々を送っていた私の留学生活は、半年経過した頃に突然のアクシデントに見舞われました。
それは新型コロナウイルスの流行です。
1年間、滞在するつもりでしたが、今後の状況が不透明であり、日本大使館からは一時帰国を勧める退避勧告が出ていたため、他の日本人留学生と共に帰国することにしました。
「中国にすぐ戻れるだろうか?恐らく無理だろうな・・・」という思いで帰国の途につきました。
このウイルスの流行により、国際的な渡航は封鎖されました。
このような不足の事態に関しては、東南アジアで何度も経験していたので、とりわけ驚くことはなく、焦ることもなかったです。
やはりこういうことがあるので、綿密な計画を立てることがいかに無意味かを再認識しました。
中国での滞在は楽しく過ごせましたが、中国語の能力にはまだ物足りなさを感じていました。
当初1年の留学を予定していたので、残り半年を日本で中国語のリスニングとスピーキングの向上に使うことにしました。
食事の時間以外は、ほぼ部屋にこもって勉強を続けました。
私の事情を知っている人は「国内で中国語の勉強を頑張っている人」と見ていましたが、事情を知らない人からは「引きこもりの無職」と見られていたかもしれません。
しかし世間の目は気にせず、自分のやりたいことに専念しました。
コロナ流行から半年ほど経った頃、中断していたHSK(漢語水平考試)が再開されることとなりました。
自分の現在の能力を試す意味で、また将来的に何かの役に立つかもしれないというモチベーションで受験しました。
最終的にHSK6級を取得し、スピーキングやリスニングの能力も満足いくレベルに達しました。
これを機に、中国語の集中的な勉強を一区切りし、次に何をして生計を立てるかを考え始めました。
この時、私は31歳でした。
31歳で転職活動
「30歳を超えると転職が難しくなる」という意見や「語学留学は企業に評価されない」という説を目にしたり聞いたりしましたが、気にすることはありませんでした。
「重要なのは、自分が明日食っていくためには今何をすべきか」、これだけにフォーカスしました。
ひとまず分かっていたのは、中国を含む海外への出国が困難であること。
それに伴い、満足のいく海外案件の求人もほとんど見つからない状況でした。
ただこの時、私はオンラインの世界にも興味を感じていました。
リアルの世界経済が停滞している中、オンラインの世界はその影響を受けていない、今後もっと注目されるフィールドだと感じました。
将来的に現実世界のビジネスが再開されても、再び同様の事態に直面する可能性があるかもしれない。
そうしたことを考えると、オンライン関連の業界で活き抜く術を身につけることも重要だと感じました。
そのため、自身の「海外」や「語学」という強みを一時的に後回しにし、前職での「製造業」と「BtoB営業」の経験を活かせ、かつ将来的にはアジアへの展開も視野に入れているIT関連企業をターゲットに転職活動を開始しました。
幸い書類選考で落とされることは一度もなかったです。
面接ではすべての企業から、「帰国後コロナ下で何をしていたか?」と質問を受けました。私は正直に「自室に籠って中国語を勉強していた」と答えました。
2ヶ月前に取得したHSK6級の資格は、勉強をしていた証として説得力を持たせました。
もちろん、「このままコロナが長引いて、強みとしている海外案件に中々携われない可能性もあるが、それは大丈夫なのか?」や「IT系の経験がないが、ついてこれそうか?」などのツッコミも受けました。
私としては「この事態をむしろチャンスととらえ自分を変えたい。オンラインの世界でも活躍できる人材にまずはなりたい。コロナが収束すれば海外 x 語学の強みをも全面に押し出していきたい。ただそれに向けた準備を今すべき」と語り、納得してもらいました。
最終的に6社の内4社から内定を得て、「どうしても来てほしい」と言われた企業に入社しました。
転職活動に掛けた期間は約2ヵ月でした。
この会社での勤務は、オンラインでの基本的な商売方法を学ぶ良い機会となりました。
勤務中は中国語を使用する機会はありませんでしたが、退職後の現在は活用できているため、後悔はしていません。
世間やネットでの語学留学否定派は無視して良い
以上が私が経験した語学留学と、その後の道のりについての率直な体験談となります。
今置かれている自身の状況を客観的に考慮し、都度より良い判断を下していくことで、結果として転職活動は上手くいきました。
何よりも、長年の夢であった中国留学を実現し、中国語の能力も獲得できたことは、大きな満足感をもたらしてくれました。
2019年の当時、ネット上では「社会人の語学留学は止めておけ」、「留学しても帰国後職が見つからず後悔する」、「語学留学はキャリアアップに繋がらない」といった否定的な意見が多く見られました。
しかし、これらの言説は完全に無視しても問題ないと私は考えています。
実際、私のようなケースは思ったよりも多く、以下のような方々がいらっしゃいます。
私と似たようなケースの人たち
- 29歳で会社を辞め、1年間の世界一周旅行後に転職。
- 30歳で会社を辞め、とりあえず南米へ行き、1年後に帰国して転職。
- 30歳でカナダへ語学留学し、1年後に帰国して転職。
- 33歳でカナダへ語学留学とワーキングホリデーを経て、帰国後にアンティークショップを開業。
- 37歳で中国へ語学留学し、現地の会社に就職。
- 34歳でオーストラリアへ旅立ち、40歳手前で帰国し転職。
これらの人々とは仕事を通じて出会いました。
彼らと出会った際、「なんだ、自分と同じような人って意外と多かったんだな」と思いました。
彼らは皆、無事に就職し、普通に働いています。
語学学校で40代以上の留学生達にも出会う
中国の語学学校では、欧米出身で40代以上の留学生達に出会いました。
- アメリカ人女性(60代前半):「自身の世界観を拡げたい」という動機で留学。毎晩Skypeを通じて夫と連絡を取り合いながら、中国での生活を楽しんでいるらしい。
- アメリカ人男性(40代):中国茶の文化に興味を持ち、その文化を深く理解するために中国へ留学。
- ドイツ人女性(40代):中国の文化に魅了され、その深い理解を求めて留学。
年齢関係なく新しいことに挑戦する彼らの姿に大きな刺激をもらいました。
人生のどの段階にあっても、学びや成長の機会は常にあるんだなと勉強になりました。
結論 - 語学留学、したいならすべし
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました!
ここまで読まれた方は、在職中であるものの、語学留学をすべきかどうか真剣に悩んでいらっしゃる方かと思います。
私の結論は、もし何かしら理由や目的があるならば、語学留学をお勧めします。
私自身、中国語の習得と中国の文化に触れるために退職し、留学することを選びました。
語学力向上を目指す場合、3ヵ月や半年のような短期留学よりも1年ほどの長期留学が有効です。
短期留学では、特にリスニングやスピーキングの向上に限界があると感じました。
また語学留学の際には、最終的に何らかの資格を取得することをお勧めします。
英語なら英検、TOEIC、IELTS、もしくはTOEFLのいずれか、中国語なら中国語検定やHSKなどがあります。
これらの資格は勉強の成果を客観的に示す証拠となり、いざという時に役立ちます(資格のための勉強は面倒くさいのですがね・・・)。
また帰国後の就職活動において、「30代で海外に行ったからキャリアに傷がつく」という心配は不要です。
実際に私は、1年のうち半年は日本国内の自室に籠って勉強していましたが、難なく希望通りの職に就職することができました。
同様に30代半ばで1年以上海外を放浪し、帰国後、希望の職に就いた人もいます。
30代の若輩者である私が言うのもなんですが、思い立ったら吉日で行動を起こしてみて、都度状況を見極めながらベターな対応や選択をしていくことが人生を活き抜く上で非常に重要だと実感しています。
人生は予測不可能な出来事で満ちており、出会う事象に対して柔軟に対応し、自分の進むべき道を切り開いていくことが、人生を豊かにする鍵だと思っています。
他人の否定的な意見などに安易に惑わされず、自分の信じる道を歩むことが大切です。
語学留学を検討しているあなたに、心からエールを送ります。
挑戦は時に不安を伴いますが、その一歩が新しい可能性を開くことになります。
自分の人生の主導権を握り、是非悔いのない人生を!
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