先日、友人と食事をしているときに「インドネシア語を学ぶメリットってある?」という質問を受けました。
このテーマについてあまり深く考えたことがなかったので、すぐに答えるのが難しかったです。
私は前職でインドネシアに4年間駐在しており、仕事の必要性からインドネシア語を勉強しました。
もし駐在がなければ、おそらく自分から学ぶことはなかったでしょう。
客観的に見て、インドネシア語は英語に比べてマイナーな言語です。
例えば、インドネシア語にも検定試験がありますが、英検5級に相当するE級を受験する人は日本国内で年間約500人くらいです。
これに対して、英検5級の受験者数は年間約30万人と言われています。
この数字から、インドネシア語のマイナーさが伺えます。
しかし友人の質問を受けて、インドネシア語を学ぶメリットについて考えてみることにしました。
この記事では、私の経験をもとに、インドネシア語を学ぶメリットについて考察しています。
インドネシアや、インドネシア語に興味がある方の参考になれば幸いです。
インドネシア語について
そもそもインドネシア語とは、どのような言語なのでしょうか。
まずその成り立ちについて、簡単に解説します。
意外と知られていないかもしれませんが、インドネシアには300から400もの民族が存在し、700を超える固有言語があります。
これは世界の言語の約10%にあたり、パプアニューギニアに次いで世界で2番目に言語が多い国と言われております。
1945年の独立時、インドネシアは民族間のコミュニケーションの問題に直面しました。
解決策として、歴史的に東南アジア地域で広く使われていたマレー語を基に、現在のインドネシア語を創り、国語として制定しました。
この経緯があるため、多くのインドネシア人はバイリンガル、もしくはトリリンガルです。
彼らは国語であるインドネシア語と、自身の民族の言語(例えばジャワ人ならジャワ語など)を話します。
また、異なる民族出身の両親であれば、国語のインドネシア語に加えて、それぞれの言語を身につけることがあります。
家庭内で父親とは父親の民族の言語で、母親とは母親の民族の言語で会話し、家族全体での会話はインドネシア語で行うケースもあります。
一方で、国語のインドネシア語しか話せない人もいます。
このように、インドネシア語は多様な人々を繋げる上で非常に重要な役割を果たしているのです。
ちなみにインドネシアでは、英語はほとんど通じません。
インドネシア語を学ぶメリット
さてここからは、インドネシア語を学ぶメリットについて、いくつかのポイントをご紹介します。
1. インドネシアに注力している企業での重要性が増す
特に資金に余裕のない中小企業では、日本語を話せるインドネシア人を雇うことが予算的に難しい場合があります。
これは、日本語を話せるインドネシア人の給与が高いためです。
その結果、これらの企業は日本語や英語を話せないインドネシア人を採用する傾向にあります。
そのため、これらのインドネシア人社員をマネジメントするためには、当然インドネシア語が必要になります。
こういった会社ではインドネシア語が話せると、好待遇で現地に赴任できるチャンスがあります。
さらに、インドネシア語を話せることで、自らインドネシア系の企業を訪問し、新規開拓に向けた営業活動も可能になります。
インドネシア語ができることにより、会社の売上向上に貢献する可能性が広がり、会社からも重宝されることでしょう。
またインドネシアは約2億7000万人の人口を持ち、経済的に内需のポテンシャルが非常に高い国です。
GDPは毎年約5%増加しており、中間所得層も拡大しています。
このような状況の中、インドネシアへの進出を計画している企業にとって、インドネシア語を話せることは大きな利点となります。
そのため、インドネシア語を話せる人には、これらの企業からのオファーを受けやすくなるメリットがあります。
2. インドネシアの旅行がより楽しくなる
インドネシア語を話せると、現地の人との会話が可能になります。
これにより、ガイドブックに載っていない情報を得ることができます。
例えば、地元の人だけが知っているおいしいレストランや、隠れた絶景スポットを教えてもらうことができます。
また、様々な交渉がしやすくなるという利点もあります。
たとえば、観光地で販売されている衣服や民芸品は通常、観光客向けに高い価格設定がされています。
しかし、インドネシア語が話せれば、これらの商品の価格交渉が容易になり、よりお得な価格で購入できる可能性も高まります。
それから、小規模な旅行会社と交渉して、自分が指定したルートで島々を巡るように船を手配してもらうことも可能です。
値段の交渉も含め、自分だけのカスタマイズされたツアーを実現することができます。
実際にこの方法で、より低いコストで自分に合った観光を楽しむことができました。
このように、インドネシア語を話せると、一般の観光とは異なる、より個性的で充実した旅行体験ができるようになります。
3. インドネシア人の友人がめちゃくちゃ増える
インドネシア語を学ぶことで、インドネシア人の友人がめちゃくちゃ増えます。
まず日本人の中でインドネシア語を話せる人が少ないため、初対面でのインパクトが大きいです。
インドネシア語でコミュニケーションが取れると、珍しがられることが多く、すぐに親しくなります。
実際に出逢って間もないのに、インドネシア人の家に招かれて家庭料理をご馳走になるなど、暖かく迎えられた経験が何回かあります。
また、地元のインドネシア系企業で働く人たちとも、比較的簡単に関係を構築することができます。
「インドネシア語が話せる日本人」という点が強いインパクトを与え、インドネシアから離れて4年が経過しても、未だに覚えてもらっていることがあります。
こうした繋がりは、次のビジネスの機会にも繋がっています。
さらに、多くの友人ができることで、さまざまな文化に触れる機会も増えます。
前述した通り、インドネシアには300から400もの民族が存在しており、知り合った友人がジャワ人だと思っていたら、実はスンダ人だったりすることもあります。
このような形で、多様な民族や文化に触れ合うことができ、日本では経験できない貴重な体験を得ることも可能になります。
4. インドネシアの周辺諸国の人たちとも関係構築が可能
インドネシア語を話せると、その周辺諸国の友人も増えます。
前述したように、インドネシア語はマレー語から派生しており、多くの類似点を持っています。
現地の人々によると、語彙の約60~70%がマレー語と共通しているそうです。
マレー語話者が多い国としては、主にマレーシア、シンガポール、ブルネイが挙げられます。
これらの国でマレー語を話す人々とは、インドネシア語でコミュニケーションを取ることで、より親しみを感じてもらえることがあります。
また、かつてインドネシア領であった東ティモールでは、インドネシア語を話す人々が沢山います。
このように、インドネシア語を話せると、インドネシアの周辺国でもその言語スキルを活用できるチャンスが広がります。
5. 他のオーストロネシア語族に属す言語を学ぶきっかけになる
マニアックな話ですが、インドネシア語を学ぶことは、他のオーストロネシア語族の言語を学ぶきっかけになり得ます。
インドネシア語という言語は、世界で二番目に大きな言語グループである「オーストロネシア語族」という言語グループに属しています。
この言語グループは、東南アジア、オセアニア、マダガスカルなど広範な地域で話されており、1,200以上もの言語が含まれています。
例えば、マレーシアの公用語であるマレー語、フィリピンのタガログ語、ベトナムのチャム語、マダガスカルのマラガシ、ポリネシアのハワイ語、マオリ語、サモア語、トンガ語などが挙げられます。
これらオーストロネシア語族に属する言語は、文法や語彙において類似性を持っています。
例として、「5」という数字を挙げてみましょう。
インドネシア語では「lima(リマ)」と言います。
マレー語も「lima」です。
タガログ語も「lima」です。
ベトナムのチャム語も「lima」です。
ハワイ語も「lima」です。
フィジー語も「lima」です。
台湾のアミ語も「lima」です。
アフリカ マダガスカルのマラガシは「limi」です。
このように同様の表現が使われています。
これは、言語学的に非常に興味深い点です。
もちろん、これらの言語が全て似ているわけではありませんが、言語間の類似性を探ることは、語学が好きな方や知識欲のある人にとっては魅力的な探検になります。
言語間の類似性を見つけた時は、なぜかとてもうれしくなります。
こういった知識欲を満たすメリットもあるのではと思います。
インドネシア語を習得して、自分の可能性を拡げる
この記事を最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
インドネシア語の学習メリットを紹介しましたが、皆さんにとって新しい発見があれば幸いです。
インドネシア語はよく、学びやすい言語と言われます。
中国語やベトナム語のような発音の複雑さはなく、タイ語やアラビア語と異なりアルファベットを使用しているので、新しい文字を学ぶ必要もありません。
また、スペイン語やフランス語のような男性名詞、女性名詞といった区別も存在しません。
ただし、インドネシア語独自の難しさもあります。
特に接頭辞や接尾辞、口語と文語で使用される単語の違い、地域による発音の差異など、注意が必要な点も存在します。
それでも全体的には、他言語に比べて学びやすい言語だと思います。
勉強を始める前に構えることなく、気軽に取り組むことができるでしょう。
もしインドネシアに興味があれば、ぜひインドネシア語の学習に挑戦してみてください。
新たな可能性を発見できることを、心より願っております。
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