語学で活きる

日・英・中・印尼語を活用し、乱世を生き抜く凡人の備忘録

知識ゼロからHSK6級へ:私の中国語学習法(下)

自分で作成した中国語のテキストたち
作る過程で知識が自分の血となり肉となった

(以下の昨日のブログの続きです・・)

della-asia.hatenablog.com

中国に到着

レッスンが始まるまでの約1週間の間に、いくつかのタスクをこなした。まず、銀行口座を開設しようとしたが、私の中国語の能力が原因で、2件の銀行に断られてしまった。それでも3件目で口座を開設することができた。身振り手振り、筆談を用いて開設した。また、語学学校の入学手続きを進め、生活に必要なものを購入した。それから、大学構内を散策して、新しい環境に慣れる努力をした。暇な時間は「中国語 初歩の初歩」という参考書をパラパラと読んでいった。暇な時間も多かったし、そんなにページ数の多い参考書でもないので1週間のうちにほぼ読み終えることができた。だいたいの文法事項は頭に入ったが、「中国語って語順がやっかいだな・・」という印象をもった。

レッスン開始の3日前くらいに、語学学校から面談の依頼を受けた。面談を担当した方は基本的な英語を理解できたので、コミュニケーションに問題はなかった。その際、「汉语口语速成」というテキストの使用を提案された。このテキストは他の語学学校でも頻繁に使用されているらしく、実際に確認したところ基礎編や提高編など、レベル別に内容が整理されていた。そのテキストは、一見、しっかりと体系化されたものと感じた。しかしながら、私はその提案に感謝しつつも、テキストを使用することを断わった。「テキストなしでどうやってレッスンをするのか?」という驚きの反応を受けたが、私の要望としては、「私が作ってきた文章を修正してください、あと質問とか出てくると思うのでそれに答えてください。レッスンはそれだけで良いです」と伝えた。

レッスンの開始へ

面談を終え、レッスンの準備を開始した。参考書で学んだ文法や語順を使って文章を作成した。自己紹介、レッスン内での基本的な表現、飲食店での会話、初対面の人とのコミュニケーションなど、様々なシチュエーションを想定し、日本語での表現を考え、それを中国語に変換した。初めのうちは単語の知識が乏しかったため、ネットを辞書代わりにして調べた。

レッスンはマンツーマン形式。週の前半は山東省出身の先生、後半は四川省出身の先生が担当した。それぞれがJLPT 1級(日本語能力検定試験)の資格を持つ大学院生だった。レッスンでは基本的に中国語を用いて進行いただき、難しい場合は日本語に切り替えてもらった。初めの頃は日本語が混ざることも多かった。3時間のレッスン時間は指導と添削に費やされた。先生からは「北辞郎」という辞書アプリの紹介を受け、すぐにインストールして利用した。

レッスン後の午後は、受けた指導や添削内容を別のノートにまとめ、何度も音読して暗記に励んだ。その後、次の日のレッスン準備に取り掛かった。会話の場面をシミュレーションし、中国語での文章作成を行った。翌日も同じ流れを繰り返す。授業前には前日まとめた内容をちゃんと暗記しているか復習し、学校へ向かった。レッスン後は再度、音読を中心にノートに内容をまとめる作業を行い、このルーティンを日々続けた。

予習用の用紙。自分なりに会話で使いそうな文を中国語で作文する。
そしてそれをレッスン内で添削してもらっていた。
文字が汚くてすみません・・・

レッスン後に添削してもらった文を纏めたノート。
表には日本語を書き、裏には中国語で書く。
音読しながら纏めていく。

このように裏は中国語で書く。復習の際は日本語を見て、この中国語がパッと出てくるまで何度も音読する。文章は暗記しやすいように、なるべく短文になるよう心掛けた。

レッスン開始から3週間後

レッスンを開始してから約3週間が経過したころ、簡単な文章だと修正が少なくなっていた。聞き取りは未だ難しかったものの、簡易的な文で、なんとか自分の意思を伝えることができるよう上達していた。

先生からの修正も減少し、以前はレッスン内の3時間を添削に当てていたが、2時間の添削と1時間の会話練習に時間を配分するようになっていた。先生との実際の会話を通じて新しいフレーズや単語を学び、それをライティングに活用し、添削を受けて自らの知識として吸収した。

この時期から、キャンパス内の日本語サークルや英会話サークルに参加し、先生以外の中国の方々とも交流を深めていった。さらに、キャンパス外でも暇そうな露天商の方と会話したり、地元の日本語学校を訪れて中国人の友人を増やす行動をとった。勉強の日常ルーティンは依然として変わらないものの、ノートの整理にそれほど多くの時間を要しなくなっていたため、余剰時間をキャンパスのサークル活動や地元の人々との交流に使うようになっていた。

彼らとの会話で知らない単語や表現に出会った際には、逐一その漢字を教えてもらい、スマートフォンのメモ機能で記録し、宿舎に戻ってからその単語を使用した文章を作成。そして翌日のレッスンで先生に添削をお願いした。

スマホのメモ帳に、会話の中で出てきた知らない単語や表現を書き込んでいった。

レッスン開始から2ヵ月~3ヵ月後

レッスンを開始してから約2ヵ月が経過した頃、私が日常で使うような文はほぼ添削なしで通るようになっていた。先生からも「Ok、この文章は問題ない。いい感じですね、随分と進歩しましたね」という嬉しい言葉をもらうようになっていた。

この頃から、徐々に時事ネタ、ビジネス、中国の文化や歴史など、やや専門的な内容についての作文にシフトしていった。レッスン前にネットの記事を参照し、それに対する感想を記述するようになった。記事中の未知の単語や表現に遭遇した際には、それをメモして、レッスン時にその単語や表現が口語で使えるか、使えない場合はどう口語で表現したら良いかを先生に質問していた。レッスン後は、復習を行いつつ、学外で中国の友人たちと映画鑑賞や食事、近場の観光地を訪れるなどの活動を楽しんでいた。

そして、レッスン開始から3ヵ月後、学内でHSK(漢語水平考試)が実施されるということで、力試しにHSK4級を受験してみた。HSKの試験対策として過去問を1周分だけ解いてみたが、恐らく合格基準の正答率60%以上はクリアできるだろうと予想していた。結果、合格し、正答率は94%だった。先生たちも私の成果を祝って火鍋の宴を開いてくれ、とても嬉しかった。

このように作文の内容が時事ネタなど、より専門的な内容を盛り込むようになっていった。
ここでは北朝鮮のミサイルについて作文している。

中国での生活はだいぶ楽しくなっていたのだが・・・

学校はその後冬休みに入った。この機会に私はいくつかの地域を巡り、旅を楽しんでいた。しかしながら、旅先で新型コロナウイルスの流行に遭遇し、1年の留学を予定していたが、やむなく帰国することになった。

結局、日本に帰国後もコロナが流行り、部屋に閉じこもる日々が続いていた。こんなタイミングで就職活動を始めるのも難しいと感じ、「次に何をすればいいのか」と迷ったが、当初の計画通り、残りの半年間は無職のまま自宅で中国語の勉強に専念することに決めた。何事も中途半端に終わらせるのが嫌だったため、この路線を徹底的にやり抜くことを決意した。

ちょうど、もう半年分の授業料が余っていたので、その一部をオンラインレッスンに使うことにした。その時は「天天中文」というオンラインサービスを使って、レッスンを受けていた。そこでも作文の添削や会話の練習を続け、基本的な勉強のルーティンは変わらなかった。余った時間は中国で友達になった人たちとWeChatで近況を交換した。

この時期、コロナの影響でHSKの試験も中止となり、ただただ毎日のルーティンに従って自室で過ごした。もともと世間体を気にするようなタイプではないが、やはり「自分はこの先どうなってしまうのだろう・・」と将来に対する一抹の不安が生まれた。そんな時、以前買って放置していた2冊の本が助けとなった。下村湖人氏の「論語物語」(講談社学術文庫)と岡本太郎氏の「自分の中に毒を持て」(青春出版社)だ。

迷いが生じるとき、常にこれら2冊の本を参照する。
これらは今も、私の精神的な支えとなっている。

「理想は、用いられればその位置で堂々と道を行い、用いられなければ、退いて静かにひとりの楽しみを持つ」との言葉や「他人に馬鹿にされても、けなされても、本当に生きている手ごたえが自分のプライド」、「元来、道は功利的、消極的なものではない。至純な積極的な求道心があってこそ、どんな境遇にあっても自由無礙に善処できる」などの言葉が、私の精神的な支えとなった。心に迷いが生まれた時、これらの本を再読する。そうして、精神的なバランスを保ちつつ勉強に専念した。

コロナの流行後、最初に開催されたHSK5級の試験を突破し(レッスン開始から8ヶ月目:正答率88%)、レッスン開始から約1年後にはHSK6級を取得(正答率73%)。HSK5級までは普段の勉強ルーティンを守れば、過去問を1周するだけで合格可能だと考えていた。しかしHSK6級は文語調の単語が増えるため、過去問を3周した。過去問で出会った知らない語彙には特に注意を払い、それをノートに書き留めて暗記した。最終的にこの1年、目標としていたHSK6級の取得や自分の中国語の口語スキルの向上を実感し、ひとまず安堵した。

自分で自分に合った語学の勉強法を編み出してみる

中国語の勉強を開始し、約1年経った時のノートの冊数(9冊)。
このような形で、自分で自分用のテキストを作った。

自分の中国語の勉強法をこうして文章にして振り返ると、特別なメソッドもなく、単純で地味だなと感じる。作文を作成し、添削を受け、その内容を暗記し、会話で使用する。間違いがあれば、再度暗記する。この一連の流れの繰り返し。多くの人から見れば「非効率そう」とか「大変そう・・」と感じられるかもしれない。実際に学生や友人、取引先から「どうやって語学を習得したのか?」とよく尋ねられ勉強法を紹介するが、だいたい微妙な反応が返ってくる。ただ、この方法で英語、インドネシア語、マレー語も習得してきたので、実際の効果は確認済みだと思っている。

資格試験についても、単に資格のためだけの勉強で合格するのは、本当の語学力を知るうえで本質的ではないような気がしている。そのため、HSK4級、5級の勉強では、過去問を1周するだけにとどめ、自分の実力を真摯に評価しようと努めた。結果的に数値を得られたので、この勉強法がそこまで自分にとって間違いではないのかなと思っている(HSK6級の勉強は過去問を3周してしまったが・・・)。

多くの人が語学の学習をスポーツや音楽に例えるが、まさにその通りだと感じる。プロ野球で三度三冠王に輝いた落合元監督が言っていた「下手なら練習するしかないじゃん」という言葉も、語学学習においても当てはまると思う。繰り返しの勉強で、確実に会話力を上達させることができた。

「暗記に頼ると柔軟性がなくなるのでは?」との質問も受けたことがあったが、実際に困ることは今のところない。語順や文型は既に会得しているので、それに合わせて単語を選んで当てはめれば良いだけだからだ。

それでも知らない単語や成語は山ほどある。今は語学力の維持を最優先にして、時間があるときに新しい言葉や表現を学ぶようにしている。

今回紹介したのは、ある一個人の中国語勉強法。読者の方々にどれだけ響くかは分かりませんが、少しでも参考になるところがあればうれしい限りです。

 

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