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日・英・中・印尼語を活用し、乱世を生き抜く凡人の備忘録

知識ゼロからHSK6級へ:私の中国語学習法(上)

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最近、多種多様な語学の勉強法がネット上で紹介されており、興味を引かれるものが多い。発音習得のみに特化した勉強法や、日本語を外国語に即座に変換する「瞬訳」勉強法、そして語学学習の挫折を防ぐコーチングなど、私が学生だった約10年前と比べると、数多くの新しい方法が開発されているようだ。

これらの情報に接するたびに、「自分はこれまで、どのような手法で言語を習得してきたのか」と思いを巡らせることがある。私の言語習得方法は感覚的に進めてきただけに、具体的には文章にまとめたことがない。

そこで、今回は私がどのように知識ゼロの状態から1年でHSK6級(正答率約73%)を取得し、ビジネスの場でも問題なく使える口語を身につけたのか、その過程を記録してみたいと思う。もっとも、私の勉強法は先ほど挙げたような新手法に比べると原始的かつ地味なので、すぐに共感してもらえるかはわからないが、それでも綴ってみることにする。

そもそもなぜ中国語の勉強を開始したのか?

私は2019年までインドネシアに駐在し、日・英・インドネシア語・マレー語で営業活動を行っていた。ご存知かもしれないが、東南アジアの現地企業のキーパーソンには華僑・華人系が多い。彼らとマンツーマンで商談をする際、英語やインドネシア語でのコミュニケーションで特に問題はなかった。

しかし、彼らのコミュニティ内でのパーティーやイベントに招待されると、彼らが使用する言語(福建語、広東語、潮州語、普通話など)によりコミュニケーションの障壁が生じた。国家が定める公用語よりも、これらの言語の方が彼らにとっては意思疎通がしやすいのだ。

当時、私は中国語に疎かったため、これらの集まりでは常に意思疎通の壁を感じ、ビジネス上の関係構築にも影響が出た。この経験から、「東南アジアでもビジネスを進めるには最低限、『普通話』の習得が必要だ」との認識を強くし、将来的にアジア全土でのビジネスを視野に入れていた私は会社を辞め、この言語の壁を乗り越えるため中国へ旅立った。

中国へ飛び立つ前にやったこと

当時の私の中国語スキルは「你好」を言えるくらいのレベルだった。中国に到着したら現地で学ぶつもりだった。中国に行く前にやったことと言ったら、以下の3つくらいである。

  • 発音を習得する
  • 文法書を1冊購入する
  • 語学学校を選ぶ 

発音を習得する

中国語の発音の重要性はよく知られている。多くの中国語学習者からのアドバイスとして、「発音が非常に重要で、ちょっとずれがあるだけで意味が伝わらないことがある」という意見を耳にした。そのため、中国に行く前の1ヶ月半は発音の習得に専念した。駐在していたインドネシアから日本へ帰国後、私は近所に住んでいる浙江省出身の友人にマンツーマンで発音の指導を受けた。

最初の段階では、反り舌音や"an"と"ang"の違い、"ying"の発音、"xue"の"xi"から"ue"への変化、巻き舌音全般などに大変な苦労を感じた。彼からは、発音時の舌の位置、口の開き具合、喉の動きなど、細かなポイントを丁寧に教わった。その都度、彼のデモンストレーションを基に、正確な発音をマスターするための練習を繰り返した。もちろん、個人の練習も欠かさなかった。結果として、大半の発音は3週間程度で習得できた。

しかし、"xue"の発音に関しては最後まで難しさを感じていた。この発音は特に難しく、"Xi"から"ue"への遷移が自分の中でしっくり来なかった。当時、友人から「他の発音は問題ないが、"xue"だけが舌足らずな感じがする」とのフィードバックを受けた。完璧とは言えなかったが、中国への出発日が近づいていたため、そこで一旦発音の練習を終えることにした。

文法書を1冊購入する

出発の日が迫ってきたため、とりあえず文法書を探す目的で本屋を訪れた。アマゾンなどのオンラインショップでは中身を十分に確認することができない。適切な選択をするために直接本屋で手に取って確認する方が良いと考えた。

当時、アマゾンでは相原茂先生の「Why?にこたえるはじめての中国語の文法書」や瀬戸口先生の「完全マスター中国語の文法」など、高評価の書籍が数多く取り扱われていた。これらの書籍は確かに素晴らしい内容だと感じたが、前者は書籍のサイズが大きくかつ重い。そして両者とも情報量が多すぎて超初心者の私には難し過ぎると感じた。また私自身、積極的に本を読むタイプの学習者ではないため、これらの書籍は私には合わないと判断した。

最終的に、1週間から10日程度でパラパラと読んで基本的な文法(文法の大枠)を体系的に把握できると感じた参考書、高橋書店の「聴ける! 読める! 書ける! 話せる! 中国語 初歩の初歩 -川原 祥史」を選んで購入した。薄くて軽く、情報量も必要十分な感じがして当時の私にはうってつけだった。

私は、言語を習得する際の方針として、文法書は極力薄いものを選ぶようにしている。その主な理由は、基本的に私は集中して本を読みこんだり、コツコツ書物で勉強したりするのが苦手だからだ。

必要最低限の説明がなされている文法書を通じて「ああ、この言葉や文法はこのような使い方をするのか」とざっくりと理解するにとどめ、実際に口語やライティングで使ってみるスタイルを取っている。間違いを犯した場合、相手からの指摘を聞き、「そういう使い方なのか」とより理解を深め、また別の機会にアウトプットしてみる。これの繰り返しである。

書物に詳しく載っていない細かな文法事項に関しては、必要に応じてインターネットで情報を探す。基本となる文法の核心(木の幹)は参考書から学び、細かい部分や例外事項(枝葉)は実際に遭遇した際に困ったらネットで調査したり、教師に質問したりして本来の使い方を学ぶよう努めている。

ちなみに、単語集は購入しなかった。どの単語集が最適か分からず、購入した文法書に掲載されている単語を先に把握し、中国到着後に他の単語を学べば良いと思っていた。

辞書については、Plecoというアプリをインストールした。このアプリは、ピンインが不明でも手書き入力で文字を検索できる機能があるため便利だった。また、紙の辞書は持ち運びに不便で重たいため、購入の選択はしなかった。

語学学校を選ぶ

中国語の学習先として自身の受け入れ先を検討した。中国には多くの大学が外国人留学生向けに語学学校を設けている。私の選ぶ条件としては以下の通りだった。

  • マンツーマンレッスンが安価に可能な学校
  • 講師はJLPT 1級を取得しており、日本語がそこそこ話せる中国人
  • 日本人が少ない学校
  • 中国の重点大学に位置づけられている大学
  • 都市のインフラが整っている地域の学校
  • 一人部屋で、3つ星ホテル並の内装を持つ宿泊先

これらの6条件を満たす学校を、中国人の留学生斡旋者と共に調査し、宿泊費等含めて半年で30~40万円の予算で合致する大学の語学学校を見つけた。

講師は同大学の大学院生が担当し、一人は山東省出身の男性、もう一人は四川省出身の女性だった。その語学学校では主にグループレッスンが提供されているが、こちらの要望に応じて1日3時間、週5日のマンツーマンレッスンを受けることができた。

私としてはマンツーマンの学習方法が最も効果的だと感じている。自分のペースで学べるし、気兼ねなく質問や会話ができるからだ。日本人の少ない環境は、日本語の使用を控え、より中国語学習に集中するための工夫だった。また、中国の将来を担うであろう優秀な学生たちと交流したいという気持ちから、重点大学を選んだ。

最後に、生活インフラや寮の内装に拘った理由としては、快適な学習生活を送るためだった。初めは費用や日本人の少なさから田舎の学校も視野に入れていたが、交通や周辺環境の制約を考慮して、新一級都市の大学を選んだ。

こうして私はいよいよ、中国に飛び立った。

(つづく)

 

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