あるセールスエンジニアからの問い合わせ
先日、石川県に位置する某メーカーの営業職の方から問い合わせをいただいた。彼は会社から半年後に海外赴任を命ぜられ、現在一心不乱に苦手な英語の勉強に注力しているとのことだった。
彼は会社の福利厚生の一環として語学研修制度を活用しており、週に1回、会社が提携する語学学校でイギリス人講師とマンツーマンでビジネス英語を学んでいるそうだ。しかし、学んでいる内容が実際のビジネスの現場と乖離しすぎていているような気がしており、とても実務に活きそうにないとのこと。
特に困っていたのが技術的な内容についてである。彼は営業のみならず、技術的なやりとりもお客様と行う必要があるとのことだが、「そのような専門的な内容は私にはちょっと・・・」との反応を英会話講師からされるとのことで頭を抱えていた。
彼は営業職と言いつつもエンジニア(技術者)としての職務も行う必要があり、いわゆるセールスエンジニア(技術営業)に近い職務内容であった。彼の話を聞いていると、過去の自分を思い出さずにはいられなかった。
セールスエンジニア時代の私
私は新卒で入社した会社が、売上300億円未満の工業用消耗品を製造する中堅メーカーだった。もともと営業枠で入社したのだが、人手が足りないため、技術サービスも一人でおこなっていた。当時私がお客様に対しておこなっていた職務は、おおよそ以下の通りだ。
- 顕在的かつ潜在的な課題の抽出
- 先方技術者から現状のヒアリング
- 現場(工場)を訪問し、実状の確認
- 課題に対する解決法の提案
- 製品仕様と使い方の説明
- 製品を取り付ける機械など外部環境の改善ポイントの提示
- テスト品の検証
- 実際に機械上で提案した製品を立ち合い検証(製品の扱いをレクチャーしながら)
- 品質に満足いかないようであれば改良品を提案し検証
- 品質問題が発生した際
- 現品の確認と使用していた当時の状況についてヒアリング
- 報告書の作成とお客様に対する原因と対策の説明
- アフターフォロー
- 現場で問題なく活用いただけているか確認
- 製品を適切に使用いただくよう定期的に勉強会を実施
- より良い製品を使用いただくようアップセル
営業というと会社・製品紹介や、価格・納期交渉などが思い浮かぶ。しかしながら中小メーカーあるあるだと思うが、人手不足や同行訪問による費用を抑えるべく営業職ががっつり工場現場に入り込み、技術職の仕事を兼務するようなケースがある。どうしても営業職では解決できない状況の場合、数少ない技術者を同行させ現場対応するのが常だった。
英語で日常会話や商談ができても、技術の説明は困難を極める
その新卒で入社した会社は海外展開もしていたが、社内にこれまた英語を話せる人材が少なかったため、「英語が話せる」ということで入社した私はすぐに海外営業(セールスエンジニア)として各国を飛びまわることとなる。英語を活用し、上記5項目の対応をしていたわけだが、もちろん最初からうまくいったわけではない。
大学在学中に英語の勉強を頑張っていた私は、ある程度英語に関しては自信があった。しかし当初、海外のお客様訪問時はもともと準備していた内容については会話ができたものの、予期していなかった質問や現場での咄嗟の技術対応の際、適切な表現が浮かばずしどろもどろになり相手の信頼を損ないかけたことがある。
こういったケースで的確に答えられない場合、原因は2つあると思う。
- そもそも技術的な知識がない、技術を理解していない
- その状況にあてはまる、適当な英語表現を知らない
私の場合、技術的な知識に関して日本語なら打ち返せる質問でも、こと英語となるとどう返したら良いのかが分からず、十分に意図を伝えることができないため相手の頭をモヤモヤさせてしまうケースが多々あった。TOEICでたとえ良い点数を取っていたとしても、ふだんの日常会話や商談ではなんら問題なく英語でコミュニケーションをとれたとしても、技術に関してスムーズに英語で説明できるようにするにはそれなりの訓練が必要であると痛感した。そこで自分なりにいろいろと対策を講じることとなる。