語学で活きる

日・英・中・印尼語を活用し、乱世を生き抜く凡人の備忘録

ミャンマーと中国、食を通じて繋がる時の旅路

2017年、ヤンゴンにて

Meeshayの写真を見て2017年のヤンゴンを思い出す
著作者: Wagaung at English Wikipedia, CC BA-SA 3.0

File:Meeshei.JPG - Wikimedia Commons

2017年、ヤンゴン。取引先との商談が終わり、「ちょっと軽くランチでも」と、彼らが地元のレストランへ連れて行ってくれることになった。外観はちょっと古めかしく、地元の人々で賑わっているようなところだった。

レストランの入口をくぐると、目の前に広がったのは、様々な年代の地元の人々の温かな光景だった。男性たちは、伝統的なロングスカート「ロンジー」を纏っていた。彼らのロンジーは、鮮やかな色や模様が特徴で、男性の気品や優雅さを引き立てていたように感じた。

ロンジー(Longyi)を着している男性
著作者:不明, Public Domain

File:Longyi.jpg - Wikimedia Commons

また中年層以上の女性は、頬に「タナカ」と呼ばれる伝統的な化粧を施していた。タナカはミャンマー独特の自然を活かした美容法で、太陽からの紫外線対策や肌をきれいに保つ効果があるとされている。タナカという木の樹皮をすり潰して、ペースト状にし頬や額に塗る天然の化粧品である。

道を歩いていたら、気さくにウズラを見せてくれた女性
頬に黄色く塗られているのがタナカ

それぞれのテーブルで会話が弾む。その熱気と活気あるシーンが、私にはとても新鮮で印象的だった。まさに、異国情緒を感じた瞬間だった。

Meeshayという料理に出会う

「ミーシエ(Meeshay)」を食べよう。そう取引先の経営者である彼は教えてくれた。彼の先祖は中国から移住してきた漢民族。華人である。ただし中国語(普通話)は話せないので、コミュニケーションは英語で行う。

(ここでもビジネスは華人がコントロールしている。逞しい人たちだな。。)そう思いながら、彼と談笑しMeeshayが来るのを待った。

少ししてMeeshayが運ばれてきた。

Meeshayの麺は、長くて細く、色は白く透き通っていた。どうやら米麺(ライス・ヌードル)を用いているらしく、もちっとして弾力がある。

麺の上には散らばっている豚肉の細切れ、そしてコリアンダーの香りが食欲をそそった。

またスープはおそらく鳥から出汁をとっているかと思う。コクがありおいしかった。この料理は全体として、シンプルでありながら、風味など深い味わいが感じられた。

Meeshayとは?

Meeshayは日本では「シャンヌードル」として知られている。もともと起源は中国の雲南省と言われている。なお、中国にも同様な料理があるのだが、彼らはそれを「米线(Mi Xian)=ミ・シエン」と呼んでいる。このMeeshayという語は、どうやらこの米线(Mi Xian)の発音からきているらしい。

なおMeeshayには、いろいろな種類があるらしい。私が今回食したのは"Shan Meeshay(シャン・ミーシエ)"というMeeshay。この他にも、スープにトマトを使ったものや、"Madalay Meeshay(マンダレー・ミーシエ)"と呼ばれるShan Meeshayよりも若干辛く、油も多めで濃厚なものもあるらしい。

ちなみに中国からもたらされたMeeshayは、ミャンマー東部のシャン州に居住する少数民族シャン族の地域料理となり、そこから広がっていったそうだ。隣接する中国・雲南省からの影響を受けつつも、時間の流れとともに独自の発展を遂げていき、現在の形に至るとのこと。

赤枠部がミャンマー シャン州
シャン州の北東部に中国・雲南省が位置する

私は17年の当時、中国のことはあまりよく分かっておらず、米线の存在も知らないし、雲南省がどこにあるのかも怪しい状態だった。なので取引先からMeeshayの出自などについて説明を受けても、正直「はぁ、そう・・」という感じで、そこまで関心はなかった。

2020年、雲南省・昆明でMeeshayに再会

時を経て2020年12月末。丁度コロナによる厳しい防疫措置が採られる少し前である。私は中国・四川省に滞在していたのだが、「別の地域にも行ってみたい」という衝動が抑えきれず、なぜか分からないが直感に従い南下して、雲南省の昆明を訪れた。

未だに覚えている。成都の双流を発ち、中国東方航空で昆明には夜到着。空港から街中へタクシーで移動した。多くの店が閉まっていく中、宿泊先の近くにまだ営業しているお店を見つけ、そこで食事をとった。その食事こそがMeeshayならぬ「米线」だったのである。

店内の様子。夜遅かったので、中に人は誰もいなかった

昆明の初日に食した米线

予想もしない場所で、ミャンマーでの滞在時に味わったMeeshayの記憶が蘇った。麺を口に運ぶと、その食感と味わいが瞬時にヤンゴンでの記憶を脳裏に浮かべさせた。

ミャンマーと雲南省。国境を隔てるものの、似た食文化を持つこの地域の繋がりや深さを、新たに感じる出来事であった。

なおその翌月末、コロナウイルスの猛威により、昆明の街中はただならぬ雰囲気を纏っていた。外に人っ子一人見当たらない。各国からの駐在員や旅行客がこぞって帰国し始めた。

そういった流れの中、私も昆明を発ち、虹橋経由で日本に帰国した。